まさかのクルーズ旅行中、浮気発覚。
毎日幸せをかみ締めていた。
お迎え後の公園遊び、夫のワイシャツにアイロンをかけながら窓から見える緑の景色と小鳥のさえずり。全てに感謝していた。
現地ママ友たちとその家族でクルーズ旅行を計画していた。
ベニスから出発し、地中海、エーゲ海を周遊する船旅。
各家族、乗船後合流ということで、私たちは1日早くベニスに入り観光した。
後から思い返すと、その時からやたら写真を撮っては携帯を触っている夫に「景色を見たら?」と皮肉を言ったのを覚えている。
翌日、ママ友ファミリー達と合流。夫たちも普段から交流があり、子供達のはしゃぎ様と同じく、大人達もウェルカムシャンパンで乾杯した。
乗船当日の夕食はフォーマルディナーで、女性はほぼカクテルドレス、男性と子供も正装と決まっていた。
全10日間の船旅には、毎日ディナーにテーマが決められており、寄港地各国の料理が提供される。初日と最終日はフォーマルだったのだ。
思い返すと、この初日のディナーで、今後の人生が大きく変わるきっかけになったと言っても間違いではない。
テーブルに着くと、私たち一同横並びで皆の顔が見渡せた。
みんな正装して程よい緊張感の中、楽しみにしていた船旅のスタートに高揚していた。
そんな中、相変わらず携帯を頻繁に使っている夫に、笑顔の下で目が笑っていなかった私だったと思う。ワインをボトルで頼み、夫が端に居たためテイスティングをするはずが、注いでいる間も携帯を触り、私の中で音を立てて何かが切れた。
「〇〇、はいその携帯没収します。いい加減にして」
楽しい雰囲気を壊さないように、若干冗談のように軽い口調で言ったつもりだが、夫の凍りついた顔を見た瞬間、私も、仲の良いママ友も、女の勘で「はい、クロですね」と心の声が重なった。
今となっては彼女達はママ友の域を超え、なんでも言える関係になっているからか、「伝説に残るクルーズ」とか「ある意味旅行だけじゃなく楽しめた」とか、私もネタに使うくらいだ。
そこからいうまでもなく、若干お酒が入り、カクテルドレスを着たママではなくなった女たちは結束し、23時、ラウンジのバーに集合。ああだこうだ言いながら、結局パンドラの箱を開けた。ちなみにロックナンバーは子供の誕生日で二回目のロック解除で開いてしまった。
感想としては、初々しい時々生々しい、一年未満という感じ。
私の感情は、感謝していた気持ちを全部消去したいという悔し泣きと、楽しみにしていたこのクルーズがお先真っ暗になったという近視眼的な感情だった。
このことがきっかけで、女友達のアドバイスもありこのクルーズを満喫すると決めた私は、
寄港地で躊躇することなく買い物をし、友達は「船を降りた時と乗る時の格好が全身変わってるw」と未だに笑ネタの荒れ様を繰り広げた。