渡欧。
渡欧の準備と新境地での期待もあってか、あんな出来事があったのに家族の間にいい雰囲気が流れていた。
夫が先に発ち、三ヶ月後に私たちも。その間、語学を勉強したり充実していた。
渡欧当日、一時帰国した夫とともに家族や友人に見送られ、新しい土地でのスタートを切った。
しばらくは、分からないことだらけで順応するのが大変だったけど、数ヶ月すると子供を学校へ送った後は、新しくできた現地の友人たちと語学やダンス、料理教室など毎日が充実してとても楽しかった。
夫もお国柄、残業もなく夕方明るいうちには帰宅。広い庭には日本では絶対需要がないほどの大きなトランポリンがあったため、ご近所の子供達が集まり、その親たちと共にBBQをしながらお酒を飲むというのが常だった。
週末には車で行ける範囲でお隣の国へ週末旅行。
日本では考えられないこの生活が、こちらでは普通。日々を健康に楽しく、休暇を優雅に過ごす為に皆働いている。仕事も結果を出して終わっていれば、上司を気にして定時まで仕事をしているふり、忙しそうにしているふりをする必要はない。他人の目を気にせず、いかに自分の仕事が効率よくうまく回るか。それがその人の能力という考え。
とてもシンプルで余計なストレスがなく全ては自分次第。
私はビザの関係で仕事ができなかったけれど、同じ仕事をして生きていくならこの国がいいと、子供にも将来この国で就職できれば安泰だと思うほどだった。
まさに充実と幸せを絵に描いたような。あんなことがあったけれど、すんなり水に流せ、この機会を与えてくれた上司はもちろん、夫にも感謝できるようになっていた。